もう一度生徒会室まで走った。


暁先輩のもとへ。  

暁先輩に会いたくて。

私の想いが届くように。 


「暁先輩!」

勢いよく生徒会室のドアを開けた。
スマホを見ながらいつもの席に座っていた、1人で。

「由夢ちゃん、そんな急いでどうしたの?」

「あの…っ」

「みんな全然来ないから、どうしたのかなって思ってたんだよね。さっきまで花絵ちゃんもいたんだけど今―…」

「暁先輩っ!」

遮るみたいに大きな声を出しちゃった。暁先輩に変に思われたかもしれない。

「…に、用がありまして」

でも今は私のことを見てほしかったから。

「俺に?何?」

もう何の口実も用意してなかった。

だから何て言ったらいいのか、わからなくて。

私には最初から無理だったんだ。

自然にナチュラルにスムーズになんて。  


勇気ふり絞るしか、出来ない。


「チョコレート…、受け取ってほしいですっ」

震える手のひらに乗せたチョコレート、気持ちが溢れてしまいそう。


届いたらいいのに。

届いてほしい。

届くかな…。



まだ好きだなんて言えないけど。



暁先輩がゆっくり立ち上がった。

そっとチョコレートに手を伸ばして。


「ありがとう」


その時の表情は、ちゃんと見れなかった。

見ることはどうしてもできなかった。


でもね、これでいいんだ。

これでいいの。


暁先輩が誰を想っていようと、私の想いは暁先輩へのもの。

そのことは変わらないから。


“ありがとう”って言ってもらえた。
 

今はそれだけでいいよ。

それだけで…