あれから数日、暁先輩の言う通り生徒専用非公式アプリ“Speaks”では“#青春リクエスション”がプチバズりしていた。

登録者数も地味に増え、管理者の馬渕先輩は毎日が忙しいらしい。

合宿以来、生徒会に集まって今日は今後の活動について話し合い。

「すごいっすね、#青春リクエスションで検索すると80件ぐらい出てきますよ。ほとんどがマジで何言ってるかわかんないやつですけど」

トントンッとスマホをいじる凛空ちゃんの隣で同じようにSpeaksを開いた。



休みが欲しい 小遣いアップ!

購買のいちごミルクパンいつも買えないんだけど

可愛い彼女希望!

ダサいジャージからもっとカッコいいジャージにして



…と、まぁまぁ言いたい放題な感じで。正直これをどうしたいのかよくわからないんだけど。

「うわー、めっちゃ集まってるじゃんー♡」

暁先輩だけは目を輝かせて楽しそうだった。

「由夢ちゃんたちが入ってくれたからこれからもっと大きいこともできそうだし♡」

え、急なプレッシャー。あんまり自信はないけど。

「はい、これ」

馬渕先輩がタブレットを暁先輩の前に置いた。

「これに今来てるリクエスト全部まとめてあるから」

「さっすが、マブ。仕事が早いね!」

「一応まとめがなら見たけど、どれも実行しておもしろいかって言ったら微妙だぞ。あ、このデータみんなのスマホにも送ったから」

言われたようにデータを確認する。

めっちゃ膨大、果てしない。

でもどれも暇つぶしで呟きました感が否めない。

馬渕先輩がわかりやすく一覧にしてくれただけで内容は所詮こんなもんだ。

「ふーん…、まぁ悪くないか」

なのに暁先輩の表情は明るい。舌をぺろっとして可愛い…じゃなくて、もう構想が立っているのかなって思った。

私の何も浮かばない!と大して変わらない気が…

たまーにガチっぽい悩みもあるけど、それはそれで叶えられそうにないし。

ほら、例えばコレ。


“友達が欲しいです”


人の特定はしないルールでこれは難しい、だけどこの子が1年生だとしてもう半年…友達がいないって寂しすぎるよね。

「決めた、新生☆青春リクエスションの1回目のリクエスト!」

「知らぬ間にだせぇ☆マーク付いたんだけど」

馬渕先輩のツッコミも軽やかに避けて暁先輩がゴホンッと喉を整えた。



「“テストをなくして#青春リクエスション”」