#青春リクエスション

ぽかぽか陽気があったかくて外に出た。

授業がない土曜日の中庭、全然人がいなくているのは私たち5人だけ。

学校だからもちろん制服で。

「どーぞうさんが~転んだっ」

「わっ」

「はい凛空ちゃん!動いた!」

「えー、考える人のポーズなんてしなきゃよかった~!」

秋の日差しの下、思いの外賑わいを見せている。

「凛空は銅像知らなすぎなんだよ」

「普通知りませんよ!てかマブ先輩のそれ何の銅像ですか!?」

八田與一(はったよいち)

「誰っすかそれ!!てか銅像さんが転んだって何すか!?」

ルールは完全にだるまさんが転んだなんだけど、それじゃおもしろくないとこれになった。


その名も銅像さんが転んだ。


“銅像さんが転んだ”と言い終わった後、世界のどこでもいいから存在している誰かの銅像のポーズをする暁先輩発案のゲーム。


「藤代先輩のは何ですか?」

「山のポーズ」

「それ銅像じゃないっすよね!?ヨガっすよね!!」

「凛空ちゃんアウトなんだから早くこっち来てよ~!」

「由夢!先輩たちに甘すぎだろっ」

かれこれこんな感じで30分は遊んでる。

アウトになった凛空ちゃんと手を繋いで校舎の壁の方を向いてもう一度叫んだ。

「どーぞーさんが転んだっ」

振り返って先輩たちの銅像っぷりを確認する。ピタッと見事に静止して銅像になりきってる。

「………。」

「…あぁっ」

「馬渕先輩アウトです」

「粘りすぎじゃね!?絶対俺狙ってたじゃん!」

「マブ先輩こっち来てくださーい!」

口を尖らせブーブー言いながら馬渕先輩が歩いてくる。

「伊達政宗の馬がな、馬を表現するって俺にとっての難しい挑戦だったわけだよ」

「先輩、由夢が鼻で笑ってます」

「おいぃぃぃ!」

「ふふふふっ」

つい声が漏れた。子供の頃やった以来のだるまさんが転んだ(実際は銅像さんが転んだ)、こんなに笑ったのは初めてだったと思う。

「ノギのそれって何?」

「ん-、これは俺の近所にあるなんか楽しそうな像!」

両手を上げて片足を前に出すように上げてるようポーズ、どこかで見たことない気もしないけどそんな銅像は見たことない。

「花絵は?」

「山のポーズ」

「花絵ちゃんもっとやる気出して!」

ほぼほぼ直立不動で立っているだけ、しかも無表情で昨日はあんなに表情豊かだったのに今日はいつもの鉄の女。

まるで正反対のポーズで止まってる2人をちょっと遠くから見ている、それは笑っちゃうから。

「花絵先輩がんばってください!」

「え、由夢いつの間に花絵先輩って呼ぶようになったの?」

「昨日!いっぱい仲良くなれたの!」

知っていくと新しく見えるものもあって、それだけで今日が違って見える。