「よかった~!じゃあみんなお疲れ様っ!!」

「え?」

サッとどこからか現れた生徒会のメンバーであり青春リクエスションのメンバー、そして凛空ちゃんがズラリと私の前に並んだ。


…え?

「井住、お疲れ!」

誰より背の高い馬渕先輩が手を上げるとさらに大きくめちゃくちゃ視線が上がる。
てゆーかナチュラルに名前呼ばれたからつい上がった手のひらを見てしまった。

「井住さんお疲れ様」

相変わらず藤代先輩の表情筋は仕事をしていない。

「由夢!」

「凛空ちゃん待って何これ!」

「何って言うか…」

眉間にしわを寄せた凛空ちゃんの代わりに暁先輩が話し出した。

「由夢ちゃん、今日は青春リクエスションにリクエストしてくれてありがとう。君の高校生活が彩られて俺たち青春リクエスションは嬉しいよ!」

にこっと笑う暁先輩に私はまだ追いつけていなかった。

じゃあ解散!と意気揚々と号令を掛けられた。

「…………。」

いやいやいやいやっ!!!

全然わっかんないけど!!!

「凛空ちゃんっ、何!?なんだったの!?」

「…いやー、だからあれは」

グイっと凛空ちゃんの腕を掴んで顔を見た。
ん~っと困った表情を見せる凛空ちゃん、私だってこの状況に戸惑ってる。

「…基本ネタバレはしちゃいけないらしいんだけどね」

「ネタバレ?」

「表向きは由夢と野木会長のデートで、そのバックアップを藤代先輩と馬渕先輩がしてたんだよ」

「バックアップって何?何の?」

「ほら、映画の席。あらかじめ用意してあったでしょ?」

少しづつ明かされる、裏の真実。

確かに不思議に思ったこともあった。
たとえばオレンジジュースとポップコーンを買って持ってくるのがやたら早かったとか。

「あれは藤代先輩が由夢たちがシアターに向かう間に買いに行ってたんだ。映画前の売店は混むから少しでも時間短縮できるように」

ということはど真ん中の席が用意されていたのは馬渕先輩?パソコンが得意ってことはネット関係も強そうだし。

「雑貨屋さんも女の子が好きそうだからって、藤代先輩が」


“由夢ちゃんに喜んでもらいたくて探したんだ”


なるほど、そーゆうことか…

「あ、でもデートのプランは基本野木会長だし、野木会長とのデートには変わりないから…!」

「…すごい」

「え?」

「青春リクエスションすごいね!!!」

めちゃくちゃ胡散臭いあれだなと思っていたけど、完璧を求めるためにちゃんとみんなやってるんだ…

「由夢?」

「ん?」

「ショックじゃなかった?」

「え、なんで?」

「だって騙されたとか思ってない?」

「全然思ってないけど」

騙されるどころかすごいじゃんか。

だってそこまでして私を楽しませようとしてくれたわけでしょ?
私のセンチメンタルな気分でテキトーに呟いたあんなことにも。

「むしろ誠実じゃん!」

傍から見たらすごくくだらないかもしれない。

私だってそう思ってた。

でも今私の心はワクワクしていたから。
それに…

「暁先輩と藤代先輩って本当に付き合ってないんだよね」

「あー、そう言ってたけど」

そうだよね。別に自分に都合よく解釈してるわけじゃないよね。事実として受け止めていいんだよ…ね?

たぶんね、もう抑えきれないよ。


この胸の高鳴りに。


「由夢?」

「ねぇ凛空ちゃん。高校生活少しだけどころかすっごく彩られそうだよ」

引き返せない。




私、暁先輩が好き。




「…そう?」

「あ、でも1個気になることがあるんだけど」

「何?」

「映画のチケットの準備とかポップコーンとかお店のことは藤代先輩たちがしてくれたのはわかったんだけど、私がラブストーリーとオレンジジュースが好きって何で知ってたんだろう?」

ネットで調べて出て来るようなものでもないし、好きだなんて公言したこともないのに。

「…さぁ、なんとなくじゃない?」

「私そんなイメージなのかな?」