「由夢ちゃん、今日はありがとう」

1日が終わる。もうすぐ日が沈みそうな秋の夕暮れ。

「こちらこそありがとうございました…!」

待ち合わせ場所だった駅前の時計台の下、暁先輩と向き合ってぺこりと頭を下げた。

「ねぇ由夢ちゃん」

「はい…っ」

頭を上げると暁先輩が私を見ていた。

自然と視線がぶつかる。

「俺ね…」

ドキッと大きな音が鳴った。

目を合わせたまま、ドキドキと脈を打つ速さが上がっていく。

「な、なんですか…」

上手く出来そうにない呼吸に平然を装うように素知らぬ顔を見せた。

そのあとに続く言葉は何なのか考えたらドキドキが止まらなかったから。

「ちゃんと彼氏できてた?」

「え…?」

勘違いしちゃダメだって思ってたのに、そうしてそんな風に思ってしまったのが…あとから本当に恥ずかしくなったわけだけど。

あんなに言い聞かせといて結局コロッといきうそうになるとか、実力不足を感じるわ。

でもこの時はもうそんなことどーでもよかった。

「由夢ちゃんの高校生活は少しでも彩った?」


“退屈な学校生活を少しだけ彩ってくれる、まるで魔法の呪文みたいな言葉。”


それが


“青春リクエスション”


「はい…っ!」

1日が色鮮やかに光り輝いていた。


私の初めてのデート。


暁先輩と初めてのデート。


暁先輩だったから…