トンッと暁先輩の背中を押した。

生徒会室のドアを開ける。

「暁、おはよう」

「おはよう、花絵ちゃん…」

生徒会室の外でドアの閉まる音を聞いて、そのままぺたんっと壁にもたれた。

2人の話し声が小さく聞こえる。
私の話をしてる、私が花絵先輩を呼んだから。

「……人の会話聞くなんて悪趣味か」

壁から体を離し、その場から物音を立てないようにひっそりと走った。



今から2人はどんな話をするのかな。

きっと緊張した普段は絶対見せないこわばった顔でね、暁先輩は言うんだと思うの。



「花絵ちゃんが好きだよ」って。



それを聞いた花絵先輩は言うの。



「言うの遅すぎ!」って。



暁先輩と映画に行った時のことを思い出した。
一緒に見たラブストーリーの感想を言い合ったこと…


“信頼してる2人だからこその告白だったよね”


私にはできなかった解釈だった。

でも今なら少しわかる気がする。


花絵先輩は誰より暁先輩のこと、わかってたから。


暁先輩だって…

だからね、きっと大丈夫。

もう大丈夫。

答えてくれるよ。



とびきりの可愛い笑顔で。



ずっと暁先輩が見たかった笑顔で。



しあわせそうに…




なーんて、私の勝手な想像だけど。

気付いたら階段を下りてきてしまった。

まぁいいか、このまま教室行けば。

ブブッ、とスマホが鳴った。

ポケットから取り出して確認する。


“あなたの好きな人を思いっきり笑わせてほしい#青春リクエスション”


その下に返事が来ていた。


“ありがとう”


「公式からありがとうが来る日が来るとは思わなかったなぁ」



きっと暁先輩も笑ってるよね。




私も、笑うから。