「……っ!」 彼はけだるそうに起き上がると「はい」と、ぶっきらぼうにお弁当箱を渡してくる。 「あ、ありがとうございますっ」 彼の黒いズボンには、白っぽい足あとがついている。 それって……。 「もしかして……私、踏んじゃいました?」 もしかしてじゃなくて絶対にそうだ。 私が踏んだやわらかいものって、この人だったんだ……! そうと気づいたら、冷汗がドバッと出てくる。 「ご、ごめんなさいっ!」 私ってばなんてことを! 人を踏むなんて、なかなかないよね。 とにかく私は平謝り。