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「あれ? もう食べないの?」
夕飯どき。
早々に箸を置いたわたしに、椿くんの声。琉夏くんもスマホの手を止めて私に目をやった。
「うん。お腹いっぱいになっちゃった」
なにか感づかれないかドキドキしながら、「ごちそうさま」と作り笑いを浮かべて席を立つ。
……無言の視線を背中に感じながら。
部屋に入って、考えるのはたったひとつのこと。
『琴宮さんだって、欲深くなかったらローズになれてたかもしれないのにね』
佐藤さんの言葉が、グルグル回ってる。
……私はどうだろう。
ローズになれた上に、刹那くんとつき合おうとしている私こそ、欲深いんじゃないの。
エクセレントの男の子にちやほやされて、浮かれているのは私じゃないの……?
エクセレントとつき合うのがローズの宿命と蘭子さんは言っていたけど、この学校でなんの実績も残せていないお飾りみたいなローズの私が、その慣例にあやかるのはどうなの?
刹那くんを好きだからって、刹那くんの想いに甘えて答えていいの……?
考えれば考えるほど、煮詰まって。
どうしていいかわからなくなってしまった。