「その汚い手をどけろ」


立ち上がった刹那くんが、その手をぱしんっとはたく。


「なんの権利があってお前はいつもそうやって邪魔してくんだよっ!」

「権利? 当然だろ」

「はあ?」


顔と顔をぐりぐり寄せ合い、今にもキスしちゃいそう……。って、ただのおふざけならいいのに、やっぱりふたりは本気で。

私がおろおろしたところで、


「はいはいストップスト―――ーップ! 言い争ってると寧々ちゃんの傷口に響くから! この話はもうおしまい!」


両手を広げて割り込んで、いつだって明るく場をおさめてくれる椿くんに、今日も感謝。私は今度こそ、ほっと胸を撫でおろした。


最低2週間は足を固定したまま様子を見ないといけないらしい。

幸いまだ夏休みだから不便なことはないし、みんながサポートもしてくれる。

お風呂は、さすがに女性の職員さんがお手伝いしてくれることに。

最初は、「俺が介助するー」と椿くんが申し出て、みんなに総ツッコミされてた。