うっ……と唇を噛んだ彼女は、部屋の奥に目線を送る。

女子の部屋をのぞくのは気が引けるが、今は緊急事態だ。

目に映ったのは、同じように引きつった顔をしている池内と……琴宮。

……この部屋の主導は琴宮だろう。


「なあ」


中へ向かって声をかける。

琴宮が何かをささやき、困ったように首を横にふる池内。


「すぐに……自力で……戻って……くる、と思ってたんだけど……」

「なんだって?」


切れ切れに声を出したのは目の前の小林だった。

池内も駆け寄ってきて、涙目になって告げた。


「シミュレーションしたら、すぐに上がってこれた……ひゃっ!」


全開になったドアから、白樺が中へ突入し、琴宮を見下ろす。

こいつらか寧々に何かをしたのは間違いないらしい。


「いいからそこに連れていけ」


低い声で言うと、涙目になりながら小林と池内は廊下を走りだした。