「あ、俺を選んでくれてもいいんだよ?」


サササ……とソファを移動して隣にやってくる椿くん。


「な、なに言ってるの……?」


顔を近づけられて、ほんのり甘い香りが鼻をかすめる。

今日は、グレープ味みたい。


「髪が濡れてるのって、色っぽくていいねえ」


そう言って、まだしっとり濡れた私の毛束を指に絡める。


「つ、椿くん……?」


椿くんて、そういうことするイメージじゃないから、戸惑いが隠せない。

やだ、椿くんが椿くんじゃないみたい。


「寧々ちゃんさー、俺が男だってこと、忘れてるでしょー」


どんどん迫ってきて、今にも押し倒されそう……!

目をぎゅっとつむって身構えていると、


「うわあっ!」


大きな声をあげながら、椿くんがソファから転がり落ちたのだ。