絵を描かれているときは、精一杯愛されている……そんな錯覚に陥ってしまうんだろう。
女たらしとか恋の伝道師っていう異名を持つだけのことはある。
「俺、小6の時に母親なくしてんだよ」
手を動かしながら琉夏くんがつぶやいた。
えっ、と思わず琉夏くんに顔を降ると、
「目線」
すぐに注意されてしまう。
「……はい」
この状況でポーズをとり続けるのは酷なこと。
だけど、琉夏くんはそのまま話続けた。
お母さんが亡くなってからは、家政婦さんが食事の世話をしてくれていたけれど、琉夏くんは一切手を付けなかったのだど。何度家政婦さんが変わってもそれは同じ。
理由は、家庭料理を食べると、料理上手だったお母さんを思い出してしまうから。