うわっ。
校内は広いのに、被っちゃうなんて。
だけど、いまから逃げるのもかっこ悪いよね……。
琴宮さんは、廊下にいる人たちの多くから握手を求められて、笑顔でそれに応じていた。
選挙まであと10日を切ったこともあり、琴宮さんの選挙活動は前よりも過熱して、応援部隊は二倍にも三倍にも膨れ上がり、もはや大名行列。
ここは、過ぎ去るのを待とう──と、壁際によろうとしたとき、
「ひゃっ……」
列の中の誰かの肩が当たって。
はずみで、カゴの中から飛びだすミルクレープ。
やわらかいそれは、床に落ちてぐしゃっと形がつぶれてしまった。
「あっ……」
シーンと静まり返る廊下。
みんなの視線が一気にそこに集中するのがわかる。



