刹那くんは、オーブンの中で膨らむ生地を眺めて感嘆の声を上げる。 「なんでも知ってるようで、知らないことっていっぱいあるんだなあ」 お宝を発見した小学生みたいに目をキラキラさせてる。 オーブンにかじりついてる刹那くん、レアだなあ。 「ふふっ」 「……ん? なに笑ってんだよ」 私の笑い声で、じっと見られてたことに気づいた刹那くんは、急に顔をもとに戻す。 いつものように、カッコいい顔。隙なんてありません、て顔。 「ううん、なんでもない」 可愛い、なんて言ったら怒っちゃうかも。