「うんっ。母が、食べることは生きる基本って昔から言っていて。すごく料理が上手で。それで私もいろいろ教えてもらって……」


やだ、お母さんのこと話してたらなんだか恋しくなってきちゃった。

ホームシックっていうのかな。

あふれた涙をずずっとすすると、椿くんは眉根を下げて、声を落とした。


「……そっか……寧々ちゃんのお母さん、亡くなったんだ……」

「……っ!? い、生きてるよっ……!」

「えっ、そうなの? 今の流れだと、てっきり」


ペロッと舌を出して、ごめんごめんーって、いつもの表情に戻る椿くん。


「私こそごめんなさい。ちょっとホームシックになっちゃったみたい。あ、それで色々教えてもらって、家庭の味とか──」


──ガタッ。

乱暴に椅子が後ろに引かれ、琉夏くんが立ち上がった。