——4年後。


俺たちは21歳になり、結婚して1年目を迎えていた。


「天音。行くよ」

「あっ……久遠くん、ネクタイできてないよ!」

「っ……!……やって」

「ふふっ、はいはい」


天音は俺の秘書として、会社を手伝ってもらっていた。

ということは、四六時中俺たちは一緒ということだ。


「もう、いい加減ネクタイくらい自分でできるようになりなよ……!」

「……無理」

「ふふっ、なんてね。久遠くんは可愛いからなんでもいいよ」


相変わらず可愛いと俺はからかわれている……。


「……カッコいいって言って」


そう言って、天音の細い手首を掴んだ。


「はいはい、カッコいいよ!」


にこにこと天使スマイルを浮かべる天音。


「えへへ……」

「っ……やっぱり可愛いの方が合ってるよ……!」


天音はずっと可愛いことを自覚していない……。
 

「天音のバカっ……」

「ええっ……ご、ごめんね……?」

「っ……」


天音の無自覚な意地悪は、いつもと変わらないようだ。


「いいよ。天音は可愛いから許してあげる」


そう言いながら天音の小さな頭を優しく撫でてあげる。