ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「へー、なにしに行くの?
 旅行?」

「いえ、夫が急に来いと……」

「夫!?
 あんた、いつ、結婚したのよっ?」

 はあ、駄菓子研究会で山に登ることになったとき、野暮用があるのでいけないと言った、あのときですかね。

 ……決して、しんどい登山が嫌なので、あの日を結婚式にしたわけではないですよ、ええ。

「それが、普段は夫とは別々に暮らしているんですが。
 なにかあったときには駆けつけると約束しているので」

「へえ。
 ドラマチックだね」
と感心したように吉田は言うが。

「いえ、なにかあったときには駆けつけるので、それまでは、ほっといてくださいと言ったんです」

「ご主人、別の場所にいるのかい?」
と奥で休憩していたおばちゃんたちが訊いてくる。

「出稼きかい?」

「はあ、まあ、そんな感じです」

 本社は日本のはずだからな、と思いながら、真珠は言った。