ご先祖さまの証文のせいで、ホテル王と結婚させられ、ドバイに行きました

「……あの砂漠のホテルで迷子になったとき、ちょっと心細くて。
 有坂さんの姿を見つけて、すごく嬉しかったです」

 そう言うと、桔平は嬉しそうだった。

 だが、そこでやめておけばよいのに、真珠は、つい、いろいろと想像してみる。

「まあ、誰が現れても嬉しかったかもしれないですけどね、あの場合」

「……お前はどうしてそう、冷静にならなくていいところで冷静なんだ」

 桔平はそんな恨み言を言ってきたが、
「確かに、侑李が現れても嬉しかっただろうな」
と素直に認める。

 まあ、そうですね……。

「羽島さんだったら?」

「嬉しいですね……」

 桔平は自分で話を振っておいて、
「やめようか」
と言った。

「どんどん『俺に会えて嬉しい』の価値が下がってく気がする」

 困ったように眉をひそめる桔平がおかしくて、ちょっと笑ってしまった。

 なんだろう。
 上手く言えないけど、この人のこういうところは好きだな、と思っていた。

 自信満々にグイグイ来るのかと思いきや、いきなり、待てよ? と立ち止まるというか。

 経営者としては大事なことかもしれないが。

 恋をするときには間違っている。