夜風のような君に恋をした

彼のその口調は、いつになく柔らかかった。

私は何も答えることができず、ただ怯えた目で彼を見つめる。

冬夜はそんな私の気持ちを充分わかっているかのように、穏やかな声で言った。

「じゃあさ、ほら、家着くまでここ持っといていいよ。そうすれば、雨月はひとりじゃないだろ?」

何を思ったか、自分の制服のシャツの、背中側を引っ張っる冬夜。

持てと言わんばかりに、私の方に差し出してくる。

思いがけない冬夜の行動に、ちょっと唖然としてしまったけど。

――ひとりじゃない。

冬夜が言った言葉は、間違いなくじんと心の奥深くに響いていた。

「遠慮しなくていいから」

「……うん」

震える指先を、差し出されたシャツの裾に向けて伸ばした。

そっと掴むと、シャツ越しに、冬夜の存在が伝わってくる。

彼との距離が、今までないほど縮まった気がした。