夜風のような君に恋をした

冬夜がよくここに来るのは、こうやっておばあちゃんのマンションを見るためだって前に言っていた。

冬夜の本当のお母さんは小さい頃に亡くなり、冬夜は新しいお母さんのいる家に居場所がない。

だからおばあちゃんのマンションを眺めて、あそこには居場所があるって、安心感を求めているのだろう。まるで、子供のように。

「でもここ、私には何の関係もないし……」

塾の行き帰りに通るってだけで、冬夜みたいにこだわりのある場所ではない。

すると冬夜は、頬杖をついたままややうつむいて。

「俺が、いるよ」

サラリ、とそんな言葉を吐いた。

彼らしくない気障な言い回しに、言った本人でもないのに、私の方が恥ずかしくなる。

何て返したらいいかわからなくて、無駄に口をパクパクと動かした。

「だってほら、さ。ここ、部室みたいなもんだし」

我に返ったように、彼らしくない早口で言葉を足す彼。

「うん、部室。そうだね、“死にたがりこじらせ部”だもんね」

私も冬夜の言葉にオーバーなくらいに同意して、妙に気恥ずかしい今の空気をやり過ごそうとした。