夜風のような君に恋をした

不安で不安で、どす黒く濁った世界にすべてが飲み込まれてしまいそうだ。

それならいっそ、今この瞬間、夜の空気に溶けて消えてしまえたらどんなにいいか。

目下を流れる、車のヘッドライトの薄黄色に、信号機の赤や青。

星屑のようなそれらの光の中に混ざってひとつになれたら、どんなにいいか。

「なら、この場所を居場所にするといいよ。俺と同じように」

闇の景色に吸い込まれそうになっていた私は、その声でハッと我に返った。

冬夜が、悲しげな目で私を見ている。

哀れみや同情、もしくは違和感とも違う目。

そんな目をするのは、似た者同士の冬夜には私の気持ちが少なからず伝わったからかもしれない。

「え? ここ……?」

「うん、ここ」

そういって冬夜は、会ったことがないと言っていたおばあちゃんの住んでいるマンションに視線を向ける。