夜風のような君に恋をした

つっけんどんな口調でそんなことを言いながら、欄干に頬杖をついて、ぷいっと反対方向を向く冬夜。

その子供みたいな仕草は、妙に私を安心させた。

だからだろうか。

「私、もうあんなところ、帰りたくない……」

気づけば、誰にも言えなかった気持ちを、自然と吐き出していた。

死にたがりという共通点だけで繋がっている私たちの関係が、いつ切れてもおかしくない、希薄なのものだからというのもある。

知っている人には、こんなに弱っているところ、見せられない。

だけど冬夜は、赤の他人も同然だから、平気なんだろう。

冬夜が、やや困惑した方に、私を見るのがわかった。

それぞれのため息で、思い通りにいかない苦しみで、あの家は飽和している。

閉塞的な、自分を偽らないといけない学校にも、もううんざりだ。

「私は、どこに行けばいいんだろう……」

空気のたっぷりある場所が、楽に呼吸できる場所が、私の世界にはない。

どこにいても息が詰まりそうで、苦しみもがきながら、ただ流動的に毎日を過ごしている。

この先だって、きっとそうなんだろう。

――『大学受験はもっと大変』

――『就職活動はもっと大変』

そんな風に、誰かが言ってた。

世の中の模範みたいな生き方の通り、高校を出て、大学に行って、就職しても、がんじがらめの世界からはきっと逃れられない。

こんなところですら躓いている私は、よりいっそう空気を求めてもがき続けるのだろう。

水際に打ち上げられた魚のように、死んだ目をして。