夜風のような君に恋をした

すると廊下に立ち尽くすお父さんとお母さんに、暗闇の中で鉢合わせる。

ちょうど部屋から出てきたところのようだ。

お母さんは暗くてもわかるほど顔色をなくしていて、小刻みに肩を揺らしながらお兄ちゃんの部屋のドアを見つめていた。

お父さんは私に気づくと、「雨月は下に行ってなさい」と私の背中に触れ、階段の方を向かせる。

「でも……」

「いいから」

被せ気味に、私の反論を阻止したお父さん。

続いてお兄ちゃんの部屋のドアに視線を向けたお父さんは、得体のしれない怪物と対峙しているかのような、険しい顔をしていた。

そうしている間も、お兄ちゃんの部屋から、ドンッ、ドンッと絶え間なく何かを壁にぶつける音が続いていた。

合間合間に漏れる、獣の唸りのような喚き声。

胸をざわざわとさせる、本当に嫌な声だった。

「わかった……」