夜風のような君に恋をした

ある日突然不登校になったお兄ちゃんは、ほとんど高校に通わないまま中退し、今に至る。

もちろん大学には行っていないし、働いてもいない。

いわゆる、ニートで引きこもりというやつ。

「朝ご飯、置いてるから」

コンコンと軽くドアをノックし、声をかけ、入り口近くにお皿を置く。

中から返事はない。

――ああ、もう、ほんとしんどい。

五年前のお兄ちゃんのように、『学校に行きたくない』って言えたらどんなに楽だろう。

だけど、私にそれは許されない。

お兄ちゃんに続いて私までそんなことを言い出したら、今度こそお母さんは壊れてしまう。