夜風のような君に恋をした

俺は顔をしかめて熊キーホルダーを観察する。

なるほど、女子が夢中になりそうな、愛くるしい顔をしている。

それに触り心地がよさそうだ。

「知らないならいいや、とにかくこんな風に全然好みのものじゃなくても、友達に合わせて鞄につけたりするの。つけなきゃその子ががっかりしちゃうから」

「何だよそれ、めんどくさいな」

心底嫌そうな雨月の顔がツボで、俺は思わず笑っていた。

そんな俺を、雨月は驚いたように目を見開いて見ていたけど、やがて彼女も、夜風に表情筋を溶かされたみたいにふわりと笑う。

ああ、なんかいいな、その笑い方。

そんな春の陽気のような、朗らかな笑い方もできるようだ。

死にたがりのくせに、思いがけず笑い合った俺たち。

闇に浸食され冷え切っていた心が、一筋の暖かな日差しに当てられたように、温もりを帯びていく。

だけどすぐに、笑いながら見つめ合うというあり得ない自分たちの行動に気づいて、戸惑いが込み上げた。

どちらからともなく視線を外す。

心は温かいままなのに、居てもたってもいられないようなソワソワ感が込み上げた。

同時に顔に熱が集まるのがわかって、俺は彼女に気づかれないようにそっぽを向きながら、今の気まずい空気をやり過ごすような言葉を探す。