夜風のような君に恋をした

朝食を食べ終えた私は、いつものように、手つかずのお兄ちゃんの朝食を手に取る。

それに気づいたお母さんが、気遣うように声をかけてきた。

「ありがとう、いつも悪いわね」

「気にしないで、大したことじゃないから」

ニコッと笑って、お皿を手にしたまま階段を上った。

私に向けられたお母さんの期待の眼差しが、目の裏に残って、胸の奥をヒリヒリさせる。

お母さん、目が腫れてた。

昨夜も泣いていたんだろう。

階段を上って手前がお父さんとお母さんの部屋で、その向かいにある私の部屋に隣接しているのがお兄ちゃんの部屋だ。

飾り気のないその木製のドアを見ただけで、動悸がした。

お兄ちゃんは、二十四時間、ほぼずっとこの中にいる。

お兄ちゃんが高一の時からだ。