夜風のような君に恋をした

“死にたがりこじらせ部”――そんな奇妙な提案を雨月に持ちかけたのは、今にしてしまえば、赤の他人で何の接点もない雨月と、強引にでも繋がりが欲しかったからだと思う。

死にたい。

でも死ねないから、生きている。

その矛盾を抱えた日々の葛藤を、彼女と共有したかった。

彼女の声を、微かな吐息を、隣に感じて、ひとりじゃないと思いたかった。

これは恋と呼べるものではない、友情とも違う。

言ってみれば、運命共同体。

だけど雨月は俺のこの奇妙な提案を受け入れて、塾帰りに、必ず高架にいる俺のところに来てくれた。

『こんばんは』なんて並みの挨拶は俺たちには必要ない。

彼女が黙って俺の隣に並んだら、『じゃあ、今日は俺からね』といった風に、俺はさっそく“今日あったいい出来事”を話し始める。

“今日あったいい出来事”を互いに話すというのは、正直ただの思いつきでしかない。

深い意味なんてなかったけど、どうせ互いに報告し合うなら、嫌なことよりいいことの方がいいと思っただけだ。

嫌なことなんて、俺の日常には――たぶん彼女の日常にも、五万と溢れているのだから。