夜風のような君に恋をした

カタカタ……と体を揺らしながら、彼女が言う。

その言葉は本心なのかもしれないけど、俺は納得がいかなかった。

親近感のような嫌悪感のような何とも言えない感情が、胸の中に渦巻く。

こんな煮え切らない感情を誰かに対して抱いたのは、初めてだった。

それはたぶん、彼女があまりにも自分に似ていたから。

今夜、この場所で死のうとしたところ。

にもかかわらず、往生際悪く死に対して恐怖を抱いているところまで。

気づけば俺は、自分でも思いもしなかったほど、彼女に挑発的な態度をとっていた。

『でもこうやって話してみると、不自然なくらい元気そうだね。いい人ぶるのにもう疲れたってとこ?』

凍りついた彼女の顔は、肯定を意味していた。

何もかもが似すぎていて、うんざりする。

だけど心のどこかで、同類がいたことに、ホッとしてもいたんだと思う。

俺はその後も、自分でも驚くほど、彼女に尊大な態度を取り続けた。

彼女の顔が、戸惑いや嫌悪で歪んでいく。

他人にこんな目を向けられたのもいつぶりだろう?

予想もしていなかった充実感が、胸を駆け巡っていた。

『――あなたには関係ないじゃない』

最後に彼女は、瞳いっぱいに怒りをにじませて、俺から逃げるように階段を駆け下りていった。

ちょっと、言い過ぎたかな。

今さらな後悔が胸に押し寄せてきたけど、もう遅い。

ドクドクといつになく昂っている胸に手を当て、うつむく。

次に視線を上げたとき、彼女の姿はもう見える範囲にはなかった。

きっと、どこかの路地に入ってしまったのだろう。