夜風のような君に恋をした

だから、こんな風に誰かの頼みごとを断わったのは久しぶりだ。

慣れないことをしたせいで、いつまでも心臓がドクドクと騒ぎたてている。

平生を装っているけど、緊張で息をするのもやっとだった。

だけど、今までになく昇降口に向かう足取りは軽い。

窮屈な檻から、ほんの束の間、飛び出せたような感覚。

そして私は、上靴からローファーへと履き替えながら、今さらのように思い出した。

――そういえば私、あの人に、まだちゃんとお礼を言えてない。