夜風のような君に恋をした

いまだ、心臓がバクバクしている。

――『自分をかわいそうにしているのは、本当は周りじゃなくて自分自身なんだから』

彼の言葉が、心の奥底に沈み込んで離れない。

何もかもがうまくいかないのは、私のせいだってあの人は言いたいんだろうか?
くやしくて目に涙が浮かぶ。

すべてを受け入れて明るく前向きに生きろってこと?

たしかに、それができる人もいるだろう。

今の私の悩みを聞いたら、そんなことで死にたいの?って目を丸くする人もいるだろう。

でも、私には無理なんだ。

私に強さを求めるのは間違ってる。できるんだったら、とっくにしてる。

あの人は私のことなんて知りもしないのに、どうしてあんなことが平然と言えたのだろう?

あんな無神経な人間がこの世にいるなんて信じられない。

言い返せなかった自分が憎い。逃げてしまった自分が嫌い。

夜の歩道を、一目散に走り抜ける。

途中通り過ぎた一戸建ての家から、楽しそうな家族の笑い声が聞こえてきて、ズタズタの気持ちをよりいっそうみじめにする。

「ハア、ハア……」

息せき切りながら、玄関のドアを開けた。

大きく息を吸い込み、平常心を取り戻す。

動揺している姿なんて、お母さんには絶対に見せられない。

「あら、雨月。帰ったの? おかえり」