夜風のような君に恋をした

自分だっておそらく、思春期と呼ばれる年代のくせに。

彼にはたしかに命を救われたけど、こんな風にズバズバ説教されるいわれはない。

返す言葉を失い、唖然と彼を見つめる。

私を見返すその瞳は、やっぱり冷ややかだった。

いつも嫌われないようにいい人を演じてきたから、誰かにこんな目を向けられたのは久しぶりだ。

今まで抱いていた彼のイメージが、ガラガラと崩れ落ちていく。

整ったその顔があっという間に醜悪に見えてきて、電車の中で毎日のように彼に見惚れていた自分を恥じた。

――怖い。

心を真っ向からえぐってくる、この得体のしれない人が怖い。

「――あなたには関係ないじゃない」

私は最後にどうにか彼を睨みつけ、声を荒げると、踵を返して走り出す。

他人に対してこんなぞんざいな態度をとったのは、いつぶりだろう。

高架の階段を走り降り、しばらく行ったところで、おそるおそる後ろを振り返る。

夜空の下に佇む、青い道路標識を掲げた白い高架に、もうすでに彼の姿はなかった。