夜風のような君に恋をした

水色のYシャツに、ボーダーネクタイの制服。

サラサラの黒髪が、夜風に揺らいでいる。

左右のバランスが絶妙な、一重のアーモンド型の目が、間近からじっとこちらに注がれていた。

そこにいたのは、毎朝電車で見る、K高のあの人だった。

驚きのあまり言葉にならず、私はただ固まってしまう。

近くで見る彼は、遠目で見るよりもずっと整った顔をしていた。

そんなことよりも――とにかく、お礼を言わなきゃ。

そうは思うんだけど、死にかけた恐怖と驚いたのとで、思うように喉が動かない。

すると、形のいい唇がにわかに動き、彼の方から話しかけてきた。

「死ぬつもりだったの?」

我に返った私は、慌ててかぶりを振る。

「そんなつもりじゃ……。夢中になって景色を見てたら、落ちそうになってしまって」

こんな状況、どう説明したらいいかわからない。

ふーん、と唸って、彼はそこでようやく私のお腹に回した腕を解いた。

背中に感じていた温もりが離れていく。まるで抱きしめられていたかのような状況に今さらたじろぎ、額に変な汗が湧いた。

「でもさっき、『死にたい』って言ってたじゃん」

彼の言葉に、全身からサーッと血の気が失せていくのがわかった。

取り繕わなきゃ、という思いでいっぱいになって、パニックになりそうなのをどうにかこらえる。

死にたいなんて思っていること、自分以外の誰かに知られてはダメだ。