夜風のような君に恋をした

それは冬夜も同じだったようで、いつの間にか、気恥ずかしそうにうつむいている。

今は牛丼屋さんに変わっているうどん屋さんに、マンションが建つ前の空き地、最近あまり見なくなった俳優さんが映っている栄養ドリンクの看板。

改めてよく見ると、この世界は、私が知っている世界とはやっぱり少しずつ違っていた。

「家、どっち?」

「駅から線路沿いに真っすぐ行って曲がったとこ。でもちょっと遠いから、途中まででいいよ」

言葉ではそう言うものの、冬夜は私の手をきつく握って、離そうとはしない。

もうどこにも行かないで、とでも言うように。

――もうどこにも行かないよ。

そんな思いを込めて、私も彼の掌をきつく握り返す。

そうやって歩道を行く私たちの横を、ガードレール越しに、ヘッドライトを灯した車がビュンビュン通り過ぎていった。

そのとき。

「キャーッ!!」