夜風のような君に恋をした

夜の道路を流れる片道二車線の車の景色が、ぐんと近くに迫った。

背伸びをして思いきり身を乗り出したせいで、足が地面を離れかけている。

慌てて手を引っ込め、欄干を持とうとしたけど、間に合わなかった。

――落ちる……!

ひゅっと震える息を呑み、両目をきつく閉じる。

次の瞬間感じたのは、想像していた衝撃ではなく、ぐいっと勢いよく体を後ろに引かれる感覚。

ドンッと背中に何かが当たる。

だけど落下の恐怖でほぼ思考が停止していたから、そんなことを気にする余裕はなかった。

助かったと自覚できたのは、ようやく息が整い、周りの状況が判断できるようになってからだ。

よく見ると、お腹に誰かの腕が回されている。

高架から落ちそうになったところを助けられたようだ。

「あの……」

慌てて振り返り、お礼を言おうとして、息が止まりそうになった。

目と鼻の先に、まるで夜に咲く花のように、きれいな顔があったから。