夜風のような君に恋をした

冬夜は、しばらくそのままで、なされるがまま私に抱きしめられていた。

だけどやがて、そろりとこちらに顔を向ける。

きれいな瞳は涙にまみれ、夜露に濡れた黒曜石のように、淡く輝いていた。

迷子になった子供みたいに、不安げで、今にも消えてしまいそうな目つき。

「……雨月は、いつからそんなに強くなったの?」

「冬夜に会ったからだよ」

自分でも驚くほど自然と微笑めば、冬夜は涙で濡れた目を見開いて、それからすぐに下を向いた。

「本当に、そんなことで?」

「そんなことなんかじゃない。すごく、特別なことだよ」

死にたがりの君に会う夜が、楽しみだったこと。

君と出会って、知らない自分を知って、見えている世界が、少しずつ変わったこと。

冬夜はしばらく目を伏せたまま何かを考え込んでいたけど、やがて唇を震わせ、泣いている顔を隠すように私の肩口に顔を埋めた。

声も出さず、肩を震わせ、涙を流し続ける冬夜。

透明な夜に今にも溶けて消えてしまいそうなその背中を、私は優しく撫で続ける。
 
高架の下を流れる、薄黄色の車のヘッドライトに、信号機の赤や青。

見慣れた夜の景色は今日も変わらないけど、こうやって支え合ってうずくまっている私たちは、少しでも変わることができただろうか?

闇という名の海に、溺れてしまわないように。