夜風のような君に恋をした

だけど。

「違う……」

私は泣きながら、大きくかぶりを振った。

「そんなの、違う」

冬夜は、自分がいなくなった世界を知らないから。

どれほど人が追い詰められ、苦しんで、あなたのことを考えてもがき続けているか、知らないから。

私も死にたがりだったからわかるんだ。

私たちが求めていたのは、あんな空虚な世界じゃない。

「違わないよ」

どんなに強く否定しても、冬夜は聞き入れてくれなかった。

お母さんの死の原因を作ったという絶望だけが、彼の心を覆いつくしてしまっている。

「さようなら、雨月」

「待って!」

私はまた、冬夜の背中に追い縋った。

「冬夜が好き」
そして、自分でもまったく無意識のまま、そう言葉にしていた。

私の体を振りほどこうとした冬夜の手が、一瞬止まる。