夜風のような君に恋をした

欄干に両手を置いた冬夜が、身を乗り出していく。

まるで、果てのない夜の海に、自分の居場所があるとでもいうように――。

私は無我夢中で、後ろから彼の背中に抱き着いた。

驚いたように、彼が後ろを振り返る。彼の唇が動いて、おそらく私の名前をつぶやいたのだろうけど、必死のあまり聞き取れなかった。

ただ、風の唸りのような音がしただけ。

全身に力を込め、彼を欄干から引きはがす。

私たちは、共倒れするような恰好で、ドンッと高架の地面に転がった。

彼の温もりを制服越しに感じたとき、そういえば、出会ったときもこんな状況だったと思い出す。

あのときは私が落ちそうになって冬夜が助けてくれたから、今回は逆だ。

大丈夫、冬夜は生きている。

目の前にいて、息をしている。

消えてなんかいない。

今、ここにいる。

「ハア、ハア……」

息切れしながら体を起こす。

膝をついた冬夜は、呆然としたように、地面に転がる私を見ていた。

そしてしばらくすると、その瞳から、音もなく一筋の涙をこぼす。

闇を背にして、彼のなめらかな頬を滑る、一筋のしずくの煌めき。