夜風のような君に恋をした

そのまま私は、まっすぐにあの場所へと向かった。

塾は六時半からだけど、今日は行こうなんて思わなかった。

塾をサボったのは、生まれて初めて。特別なことだなんて思わない。

冬夜の命と引き換えなら、そんなこと、どうでもいい。

高架の真ん中で、欄干に両手を乗せ、見慣れた景色が夜色に染まっていくのを眺める。

家々やビルに窓明かりが灯り、空には三日月が煌々と輝き始めた。

吹く風にも、少しずつ夜の冷たさが入り混じっていく。

道路を流れる車のヘッドライトが光り、闇の中、流星のようにせわしなく動きだした。

午後九時過ぎ。

夜の景色を吸い込まれるように見つめていた私は、やがて、三日月が半月に変化しているのに気づいた。

風が、先ほどよりさらに冷えている。

ふいに近くに人の気配を感じ、ハッとした私は、すぐさま顔を上げる。

そこにいたのは、冬夜だった。