夜風のような君に恋をした

それから、この世にたったひとりしかいない、人間の尊さも。

「私の兄が引きこもりになったのも、お兄さんのことで、自分を責め続けた結果だと思うんです。私には、気の利いたことは何も言えないけど……」

私だって、自分を大事にできなかった。

「自分を大事にしてください。きっと、お兄さんもそれを望んでいると思います」

だけど、冬夜が宵くんを可愛がっていたことは知っている。

家族の話をするときは暗い彼でも、宵くんの話をするときだけは楽しそうだった。

優しい冬夜が、大好きな宵くんが苦しんでいるのを見て、喜ぶわけがない。

宵くんは潤んだ瞳で、食い入るように私を見ていた。

だけどひとつ瞬きをして、うっすらと笑みを浮かべた。

「わかりました」

それでもやっぱりその笑みは、どこか泣いているようだった。