夜風のような君に恋をした

「市ヶ谷くん……」

唇を震わせうつむいた宵くんの手を、向かいから芽衣が握りしめる。

宵くんは追い縋るように、芽衣の小さな掌をぎゅっと握り返した。

そして涙をこらえるように、肩を震わせる。

「俺は、兄ちゃんが大好きだった。それなのに、どうしてあの頃、兄ちゃんの孤独に気づいてあげられなかったんだろう?」

悲壮な声で独白する彼の声を聞きながら、私はいたたまれなくなる。

「自分を責めないでください」

私は宵くんに、できるだけ精いっぱい微笑みかけた。

傷ついた人の心を癒せるのは、笑顔と温もりだってことを、冬夜が教えてくれたから。

冬夜は死にたがりのくせに、私にたくさんのことを教えてくれた。

些細な日々の尊さを教えてくれた。