夜風のような君に恋をした

そんなことを考える余裕などないくらい、追い詰められていたんだろう。

冬夜はどれほどの絶望の中で、自ら死を選んでしまったのだろうか。

知りたい。

少しでも、彼の孤独に寄り添いたい。

「すごくデリカシーのないことを言ってるのはわかっています。でも、お兄さんがどうして死んでしまったのか、教えてもらえないでしょうか? お兄さんのことを少しでも理解して、兄を助けたいんです」

冬夜の苦しみを理解して、彼を絶望から救いたい。

午後九時まであと五時間、時間はもうあまり残されていない。

どうか、間に合って欲しい。

宵くんはしばらく考え込むように私の顔を眺めていたけど、やがて静かにかぶりを振る。

「わからないんです。さっき言った通り、兄は家族に何も話さない人でした。学校では優等生で人気者で、何の問題もなかったらしく、本当に誰にも思い当たることがないらしいんです。遺書もありませんでした」

苦しげに語る宵くん。

追い詰められたようなその表情を見ていたら、どうして冬夜が死ななければならなかったのか、彼が繰り返し悩んできたことが伝わってくる。

冬夜は、悲しいほど完璧に、死にたがりの本性を隠して生きていたようだ。

きっと、本当の彼がギリギリの状態だったことを知っている人は、五年前にはいなかったのだろう。

彼は本当の自分をひた隠しにして、孤独のうちに亡くなった。

だけど、今夜は違う。

私は本当の冬夜を知っている。

彼の孤独を理解してあげられる。

それがどれほど途方のない苦しみでも、私なら、きっと彼の孤独に寄り添える。