夜風のような君に恋をした

冬夜の死を今も引きずっているのは、お兄ちゃんだけじゃなかった。

弟の宵くんも、ずっとずっと、果ての見えない闇の中を歩き続けていたのだろう。

そしてきっと、毎朝私が電車の中で遠目に見ていたのは、宵くんだった。

あの洗い立てのYシャツみたいに爽やかな笑顔の裏で、孤独を抱えていたのかと思うと、胸が苦しい。

私は改めて決意を固めると、芽衣の掌をぎゅっと握る。

「芽衣、お願いがあるの。私、どうしても彼のお兄さんが亡くなった本当の理由を知りたいの。その理由を知ったら、お兄ちゃんを救えるような気がするから……。だからお願い、一度彼と話をさせて」

きっと今夜もあの高架に行けば、五年前に繋がる。

だから理由がはっきりわかれば、もしかしたら冬夜を救えるかもしれない。

冬夜を救えば、お兄ちゃんだけじゃない、宵くんだって救える。

「お兄さんを亡くした彼には、つらい思いをさせてしまうけど……」

芽衣はしばらく複雑な表情を浮かべていたけど、やがて「わかった」と深く頷いた。

それから、柔らかな笑みを向けてくる。