夜風のような君に恋をした

それから「そうだったんだ……」と今にも消え入りそうな声を出した。

「それでね、お母さんを悲しませて、私に迷惑ばかりかけているお兄ちゃんが、私はずっと大嫌いだった。でも最近お兄ちゃんが引きこもりになった理由を知って、やっとお兄ちゃんの立場になって考えられるようになったの。あまりにもつらい理由だったから……」

「……うん」

真剣な目で、相槌を打つ芽衣。

「お兄ちゃんは五年前に友達を亡くして、ショックから自分の殻に閉じこもってしまったらしいの。高架からの転落死だったらしいんだけど……」

「五年前に、高架から……?」

芽衣の表情が凍りついた。

「それってまさか、市ヶ谷くんのお兄さんのこと……?」

「知ってるの?」

芽衣が、ゆっくりと頷く。

「この間ね、休みの日に出かけようって市ヶ谷くんに誘われたって話したでしょ? その日市ヶ谷くんと行った場所、お兄さんのお墓だったの。そのとき、行く前にお兄さんが五年前に死んじゃったこと、教えてくれたんだ。本当はずっとお墓参りに行きたかったけど、つらくて勇気が出なくて、私が一緒なら行けるかもしれないって打ち明けてくれたの」

「お墓参りに……」

冬夜のお墓……想像しただけで、悲しい。