夜風のような君に恋をした

十月初旬の水曜日。

風邪がすっかり治った私は、塾帰り、久々にあの高架に向かった。

ここ最近、ずっと冬夜を避けていたから、もしかしたらもう私を待っていないんじゃないだろうかとも思った。

だけど、冬夜にお兄ちゃんのことをどうしても報告したかったんだ。

冬夜がくれた言葉がきっかけで、お兄ちゃんの見方が変わったから。

お兄ちゃんも私と同じか、それ以上に、つらい日々を送っていることがわかったから。

不安を抱えながら、高架の階段を上る。

そしてすぐに、細い三日月の浮かぶ空の下に、彼らしきシルエットを見つけた。

制服のシャツが、半袖から長袖に変わっている。

そのせいか、たった一週間しか経っていないはずなのに、彼をどこか遠くに感じた。

ゆっくりゆっくりと、その背中に近づく。

まだこうして私を待ってくれていたんだという感動で、泣きそうになった。

でも、芽衣のかわいい笑顔が脳裏をよぎって、胸がチクンと痛む。

ああ、すごく嫌な感情だ。

やっぱり私は、最低な性格をしている。

でもこんな卑屈な感情、いつまでも抱いていても仕方がない。

「冬夜」

欄干に頬杖をつき、夜の景色に見惚れている彼に声をかける。

ピクンと肩を揺らしたあと、数日ぶりに見るきれいな顔が、私を振り返った。