夜風のような君に恋をした

「佐原さん、新学期早々朝から勉強してるの?」

ざわざわと喧騒の絶え間ない朝の教室で、クラスメイトの女子たちが、私を囲んで驚きの声を上げた。

私が通っているのは、煉瓦造りの瀟洒な英国風の校舎がトレードマークの、中高一貫の女子高だ。

ちなみに私は、地元の中学から高校受験で入ってきた。

偏差値はよくも悪くもないレベル、真面目そうな子からあか抜けた子まで幅広い層がいる。

「うん、ホームルームまでまだ時間あるから」

にっこりと、学校用のお決まりの笑みを向ける私。

「さすが佐原さん、真面目」

「やっぱ天才はやること違うよね」

「しかもノートめちゃくちゃきれいじゃん。すご」

口々に褒めてくる三人の女子たち。

だけど三人はすぐに私には興味をなくし、中断した話を再開する。

きゃぴきゃぴと弾む彼女たちの声が、胸に重くのしかかった。

私は天才なんかじゃない。人一倍頑張って勉強をして、どうにか優等生というポジションに食らいついている。

今度こそ、お母さんをがっかりさせたくないから。

だけどそんなこと、誰も知らない。

私がいつもギリギリの状態にいることなんて誰もわかりっこない。

水辺に打ち上げられた魚のように、私は今日も誰にも知られないように、死にかけの呼吸を繰り返す。

同じ白のYシャツに赤いリボン、グレーのプリーツスカート。

同じ靴下、同じ上靴、同じ机、同じ教科書、同じバッグ。

気味が悪いくらいに揃った完璧なこの世界に溺れそうになりながら、優等生を懸命に演じ切る。