どうしたらいいんだろう、このままじゃ本当に痛い目に合う。


大きな声を出して助けを呼んだところで、誰も私なんかに興味を示すこともしないし、そもそも人通りがないこの場所で無意味な行動でしかない。


私の服の裾をぎゅっと握りしめられ、私は焦っていた気持ちが少しだけ和らいでどうにか抗う方法を模索し始めた。


全力で振り払うには勢いやちょっとした隙が必要だ。


かといって力で勝負することは負けは確定、今度はみぞおちにでも足や手が飛んできそうだ。


それ以外でこの子を無事に救出する方法は……落ちこぼれなりの魔法を駆使して脱出する、それに掛けるしかない。


一瞬の隙さえ作ればいい、それでこの子が逃げられる時間を作れるのならその後のことはその時考えればいい!


そう思って私の体内を巡る数少ない魔力を指先へと送り込み、手のひらに魔法陣を作り始める。


ただ大人しくしてしまうと返って怪しまれそうな気がして、ここは下手なりの演技をしながら魔法陣を作る時間を稼ぐ。


「離してください!」


「大人しくしろと言っているだろう!」


「お前もだ!この糞ガキめ!」


男の子にも手を出そうとするもう一人の門番に、慌てた私は未完成の魔法陣を今にも発動しそうになる。


ここで発動させたら、全て失敗してしまうのに。


でも何もしないなんて絶対に嫌なんだから――。


一か八かにかけて詠唱をするために開いた口だったけれど、その前に門番達の動きが止まるように声が降り掛かってきた。