残るは神殿へ手紙を出す案だけど……果たしてクリフ王子の目に止まることなく神殿へ届けられるかと言ったら、答えはノーだ。


私関連の話については全て管理していそうだし、またとない私を国外追放する大きなチャンスを黙って見ているはずがない。


証も無ければ、クリスタルの持つ力もなくなった今の私が、このままの状態であと何日この場所にいられるのか……。


その間にどうにか策を練って、聖女としての務めを放棄することがないようにしなくては。


重たい気持ちから溢れたため息が零れていることに気づき、考えに耽っていたと目の前にいる二人に意識を戻した。


ジルの疑いを晴らすことなくこの場で迎える死という選択肢もあったのだったと内心苦笑していると、あれだけ警戒していたジルは鋭い視線を私に向けることを辞めていた。



「今の話、全て本当か?」


「まあ。嘘だったら私が万々歳って所ですよ。神殿に戻れるならとっくの昔に戻ってます」



現実を突きつけるな、私は今非常事態に陥っているんだから。



「一応王宮を追放されても、こうして迷宮周囲の結界を管理するのは、この私の務めです。なんですけど、神殿とは違って本領発揮が出来ないせいで、ここ最近結界が歪んでしまうんです。先程は私の詰めの甘さのせいで、危険な目に合わせてしまったこと謝罪致します」



二人に向かって頭を下げると首元に掛かった欠けたクリスタルが、惨めにも綺麗に揺れた。