トウハさんに向かって言ったところで無駄なのは分かっているから、その言葉は飲み込んだ。


「それでどうしてこんな騒動を引き起こしたの?」


「何者かからの次なる命令です。街で騒動を起こし、貴方様の動きを止めろと。そして――」


やはりそうだったかと納得していた私に、トウハさんがとんでもない言葉を投げつけてくる。


「ジルゲイル様を我が物にするために盗賊と手を組み、彼らを拉致しようとしています」


「らっ拉致?!」


予想外の言葉に思わず声を荒らげるけれど、トウハさんはそれすら動じている暇もないらしい。


「彼らとは一緒ではないことから、もしかしてとは思いましたが、彼らは今何処へ」


「王都で高位魔族が出たって国王陛下から伝令がって……」


違う、それすらも手の込んだ罠だったんだ。


あの場にやって来た兵士達全員が、ルリナさんの仕込んだ偽物の兵士達だったんだ。


街の混乱状況を見て、ジルもただならぬ空気に王都も支配されていてもおかしくないとそう判断してしまったんだ。


「遅かったようですね……。情報ありがとうございます。私はルリナ様を止めるために足取りを追います」


「――私も連れて行って下さい」


「えっ」


国が危機的状況に陥りかけているのは十分承知だ。