「この先に小さな洞穴が見える。そこで一先ず休憩しよう」



先頭を切って進むジルが、苔むした岩に登り先を見渡すジルが、息が若干上がってきている私に声を掛けてくる。


昨日の出来事が夢だったかのように何事もなく普通にジルが接してきて、私の依頼のメインであるレヴィローラの大森林に足を踏み入れてどれくらい歩いたんだろう。


太陽の傾き加減からして、ざっと半日って所かしら。


昨日訪れた大森林の入口を越え、さらに奥へと突き進み大森林の中心へと確実に近づいているのは確かなはず。


人の寄せ付けない森とあって道は悪く、鬱蒼とした森に足を取られてしまうが、昨日のうちにフェイムがルーシェさんに森の中心に向かうことを話しておいてくれたのか、昨日あれだけ濃かった霧はそこまで視界を邪魔しないし、ゼノが言っていた転移魔法も発動しなかった。


本来の森の不思議な力を街で事前に調べていたであろうジルは、拍子抜けと言った様子で方角を見失うことなく私達を導いてくれていた。