何故、どうして……頭が追いつかない状況にも関わらず、睨みつける眼光は、私をこの場に縛り付ける呪いのように離してはくれない。


吐く息が徐々に白くなり、私自身の体温までも奪っていく洞窟内の寒さに、目の前にいる相手が凡の目星がついた。


巨体な体を持ち二本の大きな左右の腕から伸びる翼に、洞窟内の光を反射させる全身にビッシリと生えた鱗。


牙をむき出した口から氷の結晶が生み出されては、湿った空気を凍らせていく……その特性からして《氷霧の飛竜 【アイスワイバーン】》と判断して間違いなさそうだ。


パニックになる頭の片隅で冷静に相手を判断したのはいいものの、今後の対応までは頭は働かなかった。


ダンジョンの最下層にいてもおかしくない魔物が、こんな上層、いやダンジョンの入口手前で出現って一体何事?


長らく歩いてきたわけでもないのに、こんな所でバッタリ出会うなんて偶然あり?


第一、まだそれなりの距離があって魔法を使っている僅かな時間でそんな一気に距離なんて縮められるはずないのに。